2009年6月19日金曜日

仕事で触ったスーパーコンピューター 3 RS/6000 SP2

IBMが作った並列UNIXサーバー。SP2というものがあるからにはSP1というモデルも存在した。SP1はPower1チップをCPUに使っていて、SP2はPower2を使っていた。SP1というモデルは殆ど日本に入っていなかった記憶がある。SP2の後、どちらかというと科学技術ではなく商用のパラレルデータベース用などに使うPower PC版のノードも登場して一時期はかなりバリエーションがあった。IBMがチェスの世界チャンピオンをスーパーコンピューターで負かしたことを記憶されてい方もいるかもしれない。あの時使われたがDeep BlueというRS/6000 SP2をベースにチェス用のVLSIを組み込んだシステムであった。

ご覧のような外観なので口が悪い人は墓石と呼んでいた。この当時既に標準規格のラックマウントサーバーがあった(IBMのRS/6000シリーズでもラックマウントのモデルがあった)のだが、なぜこのシリーズだけ独自のラック(ドロワーと呼ぶ)に入っていたのかは不明だ。確か前面と後面がメッシュのドアになっていて開くことが出来たように記憶している。側面はメッシュではなく、板状になっていた。

ibmsp2

ネイビーに見える台座の部分にはハイパフォーマンススイッチ(HPS)という高速なネットワーク装置が入っている。これはLANではなく、それぞれのノードを対等につなぐことが出来るアーキテクチャで常時40MBpsのスループットを出すことが出来た。LANでは通常ある程度の損失があるため論理的なスループットと実効スループットでは差があるのだが、HPSでは論理限界とほぼ同じ実効スループットを出すことが出来た。私がこのシステムを触っていた当時は100Base-Tが存在しておらず、Ethernetスイッチもあまり一般的ではなかったので40MBps=320Mbpsというのは驚異的なパフォーマンスだった。後のモデルではSPスイッチという改良版を採用して150MBpsのスループットが出るようになっていた。

このシステムの記憶はとにかく音がうるさかったことと、MPIと呼ばれる並列ライブラリを使った場合の計算速度の速さだった。私が支援していたお客様のシステムは40ノードで構成されていたので当時ではかなりの速度だった。ただ、世界を見ると当時ハワイにあるマウイ大学に世界最大の512ノード構成のTsunamiというシステムがあり、それと比べると...だった記憶がある。また、スイッチの故障の際に中に入っているボードを見たところIntelのチップが入っていたのを見て驚いた記憶がある。SCSI用のチップだったのかRISCチップだったのかは記憶が薄く覚えていない。PentiumなどのPC用のチップではなかったことだけは確かだ。

また、SP2のコンソール(通常のRS/6000デスクトップワークステーション)にNCSAモザイクを導入して、当時自分の会社内でも使えなかった専用線接続のインターネットを体験したのも思い出だ。このSP2システムのノウハウを持っている技術者は日本には殆どおらず情報をインターネットから入手するのが有用な手段だったのだ。当時作られたばかりのYahoo!のサイトなどは1画面で表示できるくらいしかサイトが登録されていなかった気がする。まだWWWとGopherを併用していたような時代のことだ。

今ではこのSP2シリーズは廃盤となっており、IBMのスーパーコンピューターではCPUとしてCellだったりOpteronが使われている。OSも独自のAIXではなくLinuxが使われているシステムが多いようだ。2008年末現在で世界最速のスーパーコンピューターは米国資源エネルギー省に導入されているIBM製のもので1ペタFLOPSの計算能力を持つ。CPUはCellとOpteronを組み合わせている。プロセッサの数は20,000個に及ぶそうだ。

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